Mother Father Brother Sister
Misia (1998年発売)

Never Gonna Cry!
K.I.T.
恋する季節
I'm Over Here
Interlude#1
Tell Me
キスして抱きしめて
Cry
Interlude#2
小さな恋
陽のあたる場所
星の降る丘
つつみ込むように…
Never Gonna Cry!

もっと もっと スピード出して
そっと すっと 息吸い込んで
グッと ギュッと しがみついたら
心に刻もう 二人しか 過ごせない時間
「K.I.T」より


冒頭、5オクターヴの音域を持つと言われる彼女の、突き刺さる高音から始まる。そして、疾走するように上記の歌詞が続く。ドリカム、広瀬香美。なんとなく高音でこれだけ気持ちよく歌われると、彼女たちに近いような気もするが、Misiaの根底にあるのはゴスペルだ。教会で、黒人ボイストレーナー仕込みの深みのある声、リズム感。アナログ版でリリースした「つつみ込むように…」は完売し、瞬く間にヒット。このファーストアルバムもトリプル・ミリオンの名盤となっている。路線を変えたように思える「Everything」の大ヒット。だが、あの伸びやかな力強い声は、このファーストアルバム、「星の降る丘」でも健在。最初にして最高のアルバムとなっているのではないと思う。当時わずか二十歳の女性が出したアルバムとはとうてい思えない。


会いたくて 会えない
そんな日は ちょっと神様
時間だけ早まわし なんとしても抱きしめたい
「恋する季節」より


全体を通して、こういう「攻撃的」な歌詞が多い。神様にお願いして、時軸を「いじって」までも、【なんとしても】抱きしめたい、とね。

かと思うと、「早く気づいて」と懇願する女性像もあったりして。「確かに愛し合ってたよね?お願いだからそう言って」という「Tell me」へと続くくだりは、風切って突っ走っていた時代から、「恋する」気持ちをうまく表現しているように思う。

そして、「キスして抱きしめて」が始まる。この単調なリズム、ありきたりな歌詞。なのに、なぜかとても良い感じ。後に出る「it's just love」に通じるものがある。


キスして 抱きしめて「愛してる」って言って
もっと ギュッと 強く 抱いて 胸が 苦しくなるほどに
あなたの背中に手をまわし 顔 胸に埋めて
この恋を 心に 焼き付けたい

完璧なあなたを 思い出せるように 私なりたい

眠れなくて 起き出して
たいして 興味も ない くせに
よく見るって聞く 深夜番組つけると
あなたがいるような 気になって

この恋は 永遠って 焼き付けたい
「キスして抱きしめて」より


「Cry」と「小さな恋」は三角関係、別れを歌いあげる。泣きたい、泣きたい、泣きたいのに、泣けない女性が心の中で叫ぶ「彼女のもとへ 帰らないで」と。そして、大事な友達に向けるあなたの視線に気づいてしまって、分かってるのに、駄目なのに、そんな小さな恋心を諦めて進もうとする女性。

「陽のあたる場所」は、Misiaというアーティストを定着させただろう名曲。あなたと私のために永遠に歌いづける、陽のあたる場所を見つけて、悲しみを笑顔に変えるために。ゴスペル?という根幹が、この歌の歌詞の世界で広がっているように思う。


ダッダラッタッタララって 歌っていても
パッパラッパッパララって おどけていても
流れ流されて呑まれてく 気持ちとはウラハラに
もしも 私がいなくても

なんて考えてる暇があるなら
晴れた青空を 見上げればいい
こんなに小さな自分だから 一人じゃ生きられない
もしも 言葉がなくなっても歌えるよ
「陽のあたる場所」より


そして先述の伸びやかなバラード。「手を伸ばしたら 届きそうなほど 鮮やかに ひとつひとつ光放つ まぶしく」。


恋人と呼びあえる時間の中で
特別な言葉をいくつ話そう
夢に花 花に風 君には愛を そして孤独を
包み込むように
「包み込むように…」より


井上陽水か、いや宮沢和史か。なんとなく通じる歌詞の世界。包み込むようにお互いを愛し合う時間。それが限定的なところが胸を打つように思う。何においても、この歌のリズム感は圧巻だ。

CDに吹き込まれた歌が、奇跡に近いほど「うまい」歌手が多い。ぶつ切りにして、いいとこ取りのレコーディングが主流だから。が、Misiaの場合、CDで聞くよりも、あの圧倒的な声量を生で聞きたい。そう思わせる存在だ。

Never gonna cry。本心からあなたの側で、どんな時だってずっと一緒に。英語で歌い上げられる最終トラックは、やっぱり最後まで、彼女の「強さ」を感じさせてくれる。


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